かたりの椅子
劇団二兎社のかたりの椅子を見に行きました。
新聞の書評で、永井愛さんが体験した官僚制度との戦いの経験を基に書いた脚本ということが書かれていました。そのため、難しいテーマの暗い感じの作品ではと思っていました。ところが、官僚制度を象徴する「お役人」のせりふと演技に 笑ってしまいました。予想していた暗さとはまったく縁遠い作品でした。
六枝りんこ役の竹下景子さんは、きれいでした。身長157センチと小柄な人なのに舞台での存在感は抜群です。演劇で生の舞台を見ると テレビや映画と違って役者さんの演技力を感じられますね。独身でたくさん苦労をしてきた広告代理店のプロデューサーを見事に演じていました。入川クニヒコ役の山口馬木也さんは、ありえないほど純粋な気持ちを持ち続けている造詣作家の役、ありえないほどの純粋さを違和感なく見せる力はすばらしいと思いました。可多里市で行われるアートフェスティバルをめぐり、もっとも官僚的な2人の天下りと地元のお役人、市立美術館の館長・ライフスタイルコーディネーターが、アートフェスティバルのすすめ方をめぐって戦います。ラストの会議の部分は、もっとも永井さんが描きたかったところでしょう。思わず自分はどんな人間かな?どういきているかな?と胸に手を当てて考えました。その他の出演者の皆さんも、劇中で徐々に変わって行く人の心を見事に描いていました。
登場人物
イベントプロデューサー 六枝りんこ(むつえだりんこ) 竹下景子
造形作家 入川クニヒト(いりかわくにひと) 山口馬木也
可多里市文化振興財団・理事長 雨田久里(あまだくり) 銀粉蝶
可多里市文化振興財団・常務理事 目高陽倫(めだかようりん) 大沢健
可多里市市役所生涯学習課・職員 北条美月(ほうじょうみつき)内田慈
田中屋酒店・店主 田中栄太(たなかえいた) 吉田ウーロン太
可多里市市役所生涯学習課・課長 沼瀬圭作(ぬませいけいさく)でんでん
ライフスタイルコーディネーター 戸井ひずる(といひずる) 松浦佐和子
可多里市立美術館・館長 九ヶ谷章吾(くがやしょうご) 花王おさむ
舞台装置はいたってシンプルで、そのシンプルな舞台を いくつものシーンに描き分ける照明には 今までにないものと感じました。照明は中川隆一さん、照明の力ってすごいなと思いました。
小学館の季刊「せりふの時代」春号に掲載されています。